藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

ALS症例から見る各種神経細胞仮死説を由来とする回復過程


筋萎縮性側策硬化症(以下ALS)には様々な仮説が存在する。興奮性細胞死との関連でグルタミン酸放出過剰説・グルタミン酸トランスポーター異常説、ミトコンドリア障害説、酸化的ストレス説、蛋白構造異常や蛋白分解系の機能異常による異常蛋白の集積説、ニューロンの構造や分子の輸送に関わる細胞骨格蛋白の異常説、栄養因子欠乏説、免疫異常説、中毒・欠乏(重金属など)説、感染(レトロウィルス)説、外傷説、など(live today for tomorrowより)。
運動神経を遷延的に侵し死滅させていくと言われる進行性の神経原性疾患であるものの、初期症状は整形領域疾患とも極めて類似する為、診断が告げられるのは相当進行が進んでからであり、進行速度や症状の初期発症部位等も個々に差がある為、診断は最後まで付けられ難いものである。ましてALSの診断は死の宣告である。
本態性ALSに罹患した場合、残念ながら現段階では治る疾患ではないとされているが、上記の発症起因が大脳皮質内で生じている神経細胞仮死で生じている場合であれば回復する可能性もゼロではないと言う観点で話を進めたい。既存仮説から抜粋した場合、グルタミン酸放出過剰説・グルタミン酸トランスポーター異常説、栄養因子欠乏説に近い。
先ずはその前提に対して簡単にではあるが、僅かに理解を深める為の話もしなければならない。人間には様々な神経が存在し、当該部位の神経が損傷した際には多種多彩な症状を出し、危険信号である事を教えてくれる。この信号も軽微な状態であれば無視をしても事無きを得るものだが、信号無視を繰り返せば何れは症状も変容する場合もあり、一層の日常生活の質を下げざるを得ず、時としては治らないと言う事態まで陥る可能性もある。

1)末梢神経(運動・知覚・自律神経)の損傷にも進行過程は存在する
損傷と書くと怪我や手術、火傷等の外傷性由来が思い浮かぶが、凡ゆる概念を損傷とする。肩凝りや腰痛、膝痛も損傷である。カジュアルに見受けられるのは患者層が多いか少ないかの差だけでしかなく、罹患した患者全ては個々の損傷経緯があり、放置したか加療したかによっても又異なるものであり、多人数が罹患しているからと軽視してはならない症状でもある。
炎症や炎症停滞、当該部位低酸素状態の停滞、構造的異常に伴う骨性由来に伴う鋭敏な疼痛、これらに付随する癒着や肥厚に伴う脈管系の圧迫は日常的な生活を送り続けていても起こる事であり、個々の受容範囲、許容範囲を超えた時点で症状として自覚すると考えられる。
この受容範囲も、その時の基礎的身体に於ける抗炎症ホルモンの分泌能や、休養の有無、既往としての構造的異常の有無、薬物治療の内容、年代、家事労働の内容等によっても大きく左右する。これらの経緯や概念が混じり合い、経時経年で悪化していく。
そのような中、人は「痛み」と言う症状に対しては過敏に反応すると推測される事から、知覚神経に絞って話は進めるが、多くの初期的症状の知覚神経の反応は「痛み」かもしれない。その「痛み」を放置しておく事で、より鋭敏に痛みを自覚し易くなり、時に強大に感じ、症状自覚部位は広範化し、そして1日を占める「痛み」を自覚する時間の割合が増えてくる。
改めて書けば、「痛い」と自覚している時は患部に負担を掛けているから「痛い」のであり、患部に損傷を加え続けている証拠と言う事だけは決して忘れてはならない。故に「痛くても歩け」は極めて軽症期に至ってからでなければ推奨してはならないものだと思っているし、鎮痛剤を飲ませてウォーキングを勧めるなぞ狂気の沙汰だと思っている。動いて傷めたものが動いて治るなら傷める理由は元々存在しない。
そのように持続的な損傷を加え続けた結果、今度はその「痛み」が「痺れ」や「皮膚感覚異常(知覚鈍麻)」へ発展していく場合も少なくない。受傷度合いにより「痛み」を自覚する事なく「痺れ」や「皮膚感覚異常(知覚鈍麻)」へ発展していく人もいるが、初期的な段階では「痛み」を訴え(痛みの前に冷感を自覚する人もいるが)、その後、段階を経て症状は進行していくケースが圧倒的多数である。
一般認識として「痺れ」は神経実質の器質的損傷であると言われているが、臨床反応上、異なると分かる。仮に神経実質に部分断裂等が生じた場合であればニューラプラキシア等の範疇に入り、全く症状の出方は異なる。日常生活に於いて明瞭な損傷が加わらず、且つ当該部位を圧迫する事でも違和感がないのであれば、それは神経実質の器質的損傷ではなく、局所炎症や浮腫等に伴う栄養状態の不安定性から派生した非器質的損傷で生じているものであると推測される。器質的異常で生じた症状ではなく、非器質的異常が関与する神経細胞の炎症や浮腫等に伴う当該部位の栄養供給の不全状態を非器質的損傷下に於ける神経細胞の仮死状態であると、この段階では仮定する。
改めて、非外傷性(非器質的損傷)下に於き、栄養状態の不安定供給から派生した知覚神経の仮死状態で生じるのが「痺れ」「皮膚感覚異常(知覚鈍麻)」と仮定する。このような状態迄陥ると回復迄には若干時間が掛かるケースもあるが、丹念に加療すれば治るケースも大半である。勿論、その過程に於いては当該部位の認識を患者側にもしてもらい、極力負担を掛けない事が早期回復へと繋がると言う事は言うまでもないが、これも「痛み」程度であれば、加療せずとも安静を強いる事で回復する場合もあるのは多くの人間が知っている事である。
しかし、非器質的損傷ながらも、神経実質の仮死状態に陥った「痺れ」や「皮膚感覚異常」が生じた場合、強制的に外部から栄養供給を見越せる加療をせぬ限り、極めて治る気配はない、と言う事も多くの人間から伺う事も出来る。放置しても良くなり難いのが神経細胞の仮死状態となった諸症状である。このように、カジュアル性の高い整形外科領域疾患の大半である知覚神経異常に伴う症状とて、症状を放置しておくと進行する可能性が大いにあるのは、症状を長年抱え続けた患者が一番既知している事と思う。先ずはこのように、抹消神経の神経損傷とて放置する事で進行する場合も少なくないと言う事を前提とする。

2)脊髄前角に居座る運動神経の(神経仮死)進行を考える
整形外科領域疾患の中では割合的に少数かもしれないが、時折運動神経の神経仮死が生じ、「脱力」を発症する患者もいる。勿論、知覚神経部の損傷が著しいあまりに脱力感と表現する場合もあるかもしれないし、知覚神経損傷との複合的な症状も惹起される場合もゼロではない為、こればかりは実際の症例を現場見てみなければイメージし難い場合もあるかもしれないが、「痛みはないけど力が入り難い」と言う状態をイメージするのが良いかもしれない。
この運動神経もバッサリと切断された場合、完全な運動麻痺は生じるが、このような器質的損傷でなくとも、(運動)神経実質の栄養供給が不全状態に陥り仮死状態になった場合でも脱力は生じる。このような状態も、当該部位に対し栄養供給を外部から見越せる治療を行い続ければ、「脱力」と言われる諸症状も回復するものだが、四肢の脱力、両下肢の脱力(運動神経の神経仮死)に関して解剖学的に考えれば、前角部位に対して易負担傾向となる脊椎のラインがどのようになっているかと言うのも併行して考察する理由が生まれる。
生理的に前弯傾向を示している頚椎や腰椎が後弯傾向に陥っている場合、胸椎等が側湾傾向の場合等が最も多いケースかもしれない。頚部運動神経が損傷すれば上肢は動かしづらくなり、腰部運動神経が損傷すれば下肢が動かしづらくなる。時折、腰椎分離・すべり症等の構造的異常によって前角(前根)部位まで症状を来す症例もあるが、これらも丹念に加療すれば人間は順応する。生活上、脊椎への易負担傾向である場合、その理由を知り、負担を掛けない生活を送る事で将来的にも再燃する事なく十分な生活を送る事が出来るようになるが、これらの脊髄前角部位に負担の掛かる原因を鑑みず、悪化要素を取り込み続けた場合、回復は得られ難い。
このように、1)で述べた知覚神経損傷の進行と同様、2)の運動神経損傷も進行する場合が多く、解剖上、知覚神経部より逃げ場のスペースが確保され難い運動神経部に関しては、一度受傷した場合、無加療での自然回復と言うのは残酷ながらも傾向として低いのかもしれない。筋原性疾患、神経原性疾患を除外された純粋な整形領域疾患群とて運動神経損傷は時として見られるが、その多くは1)の知覚神経損傷群とは比較できない程に割合としては少ない為、精神異常者扱いされた過去を持つ患者も少なくない。症状の発症部位は何処であれど、様々な罹患背景は(治療反応上も含め)脊椎に帰結する事を考察すれば、運動して治す事の脆弱性の意味も見えてくると思う。脊椎由来となる疾患は動いて治すものではない。

3)自律神経症状の進行を考える
重症度合いにもよるが、「痛み」であれば行動量を減らしたり、姿勢変化で回避する事が出来る。「脱力」に関しても、動かなければ症状にはならない。しかし、自律神経系の諸症状は行動量や姿勢変化、運動の有無に関わらず回避し難い症状である為、日常生活に負担を掛け続ける。当ブログの自律神経とは何ぞや自律神経とは何ぞや2でも書いたが、現行の定義は「分からない」が定義となっている為、その多くが向精神薬の処方対象となり、更なる悪化が懸念される群に入る。
「痛み」の知覚神経損傷、「脱力」の運動神経症状と大まかに書いてはきたが、自律神経症状と言うのは極めて広い範囲を包括する名称でもある為、分かりやすく代表的な症状を羅列する。
本態性高血圧・動悸・頻脈・のぼせ・ほてり・顔が熱くなる・微熱・頭が重い・偏頭痛・めまい・ふらつき・耳鳴り・耳がよく聞こえない・音が大きく聞こえる・涙が出る・光が眩しい・瞼がけいれんする・声が出ない・どもり・口が渇く・顔色が黒ずんで悪い・胸が苦しい・胸がつかえる・胸が痛い
のどがつかえる・飲み下し困難・食物を飲み込む時に違和感がある・息が詰まる・のどが締め付けられる・ぜんそく・背中が痛い・胃の調子が悪い・胃潰瘍・大腸の調子が悪い・ガスが出る・便秘・下痢・慢性疲労・倦怠感
肩こり・冷え性・手足がしびれる・手が震える・多汗症・夜尿症・頻尿・インポテンツ・性欲が無い・不感症・神経性皮膚炎・じんましん・円形脱毛・生理痛・生理不順・強い不安感(漠然とした不安・特定のことに対する不安)・対人恐怖・人前ですごく緊張する・他人の視線が気になる
自分の視線が気になる・赤面恐怖・表情恐怖・体臭恐怖・外出できない・乗り物恐怖・高所恐怖・閉所恐怖・先端恐怖・不潔恐怖・確認癖・視界が気になる・イライラする・怒りっぽい・無気力・落ち込み・睡眠障害(眠れない・早朝覚醒)・集中力が無い・記憶力の低下・悲観的に考える・すぐに悲しくなる・暗い・死にたくなる・摂食障害(拒食症・過食症)。(日本心身医学会より)
本態性、特発性、原発性等と名称が付くもの全てを含んでも良いかもしれないが、延髄や脳幹部、又は内臓器の自律神経系症状と多岐に渡り、これらも自然発症性であれば加療する事で症状の緩和は十分に見込める。加療により症状が緩和される経緯を逆説的に、及び罹患年代を考察すれば成長期や老年期等の脊椎変性(成長過程・圧壊過程)に伴う脊髄の下方取り込みに伴う延髄や脳幹部(又は更に上の部位)の血流量の不安定状態から発症した損傷であると推測される。これらのテンションの解除の手段が現行医療では存在しない為、わからない⇒原因不明⇒精神異常(ストレートには言わないかもしれないが)向精神薬処方の対象となる。
このような要因で至った各種自律神経症状も、若年期であれば経年変化で次第に回復傾向を示す場合もあるが、老年期の場合は器質的異常が症状の惹起因子でもある為、加療しない場合は極めて難治傾向、進行性の傾向を示す場合もある。かと言って、向精神薬を服薬し続ければ治るかと言うのは又別な話でもある。結論から言えば向精神薬を服薬しても治らないどころか悪化していく。

4)神経毒に伴う中枢神経系症状
広義の視点で捉えれば全てが神経毒になる。それが直接的に関与するか間接的に関与するかの違いである。そのような中、治療として用いる化学物質(薬物)とて神経毒の範疇となる。
ベンゾジアゼピン受容体に作用する物質として身近なものはアルコールやベンゾジアゼピン系薬物となるのだが、凡ゆる脳神経伝達物質アセチルコリンドーパミンセロトニンノルアドレナリン等)の抑制傾向の作用を持ち、術前等に於いての短期服薬に関しては極めて患者に恩恵を与えられるものだと考えてはいるが、処方期限の存在しない日本(他国の多くは依存性や常習性、副作用や常用量離脱を懸念し4週間迄と決められている)でのベンゾジアゼピン系薬物の問題が浮き彫りとなっているのは、中長期的な服薬に伴う副作用や常用量離脱症状の問題になってくる。
中長期的な服薬による耐性獲得に伴う鏡像作用、反跳作用が生まれる結果、時として薬物の主作用とは真逆の症状が出始める。その症状を更に抑制するには薬を増やし続けるか、苦しいながらも立ち止まるか、薬を減らして症状を消す手段を取るしか方法はないのだが、その多くは残念ながら薬を増やし続け、症状を抑制させる手段を選択する。最も楽な手段が薬を増やす事だからだ。但し、その代償は極めて大きな弊害を生む事は過去にも散々書いてきた。
これはベンゾ系薬物に限った話ではなく、抗うつ薬抗精神病薬、中枢神経刺激薬でも同様な事が言えるが、これらの薬物を中長期的に服薬する事で、脳内の神経細胞が変性を来す事は有名な話だ。受け皿が存在しなければ溢れて症状を来すし、自己分泌が滞っても症状を来す。特にベンゾジアゼピン受容体は脳内全般に存在する為、様々な障害が懸念される。その中で今回の主旨である大脳皮質部位での神経変性が生じた場合、全身に渡り運動障害が生じるのも又自然である。その神経細胞の変性が脱力や痩せ等の擬似的、言い方を変えれば薬剤性ALSが時として生じても不思議な事ではない。
私の知る患者の限りでの話とはなるが、急性的に症状が進行している場合が殆どであり、経緯を聞けば比較的急激な減~断薬を試みてしまった方々である為、薬剤性ではあるものの、見方を変えれば自己分泌が伴わず、且つ受容体変性により発生した何らかしらの細胞変性(神経伝達物質自体を栄養と言う見方で見れば簡単に説明は付けられるかもしれないが…)が生じてしまい、脱力、痩せへと発展し続けているものと推測出来る。それが遷延的に生じているとイメージすれば早いかもしれない。
薬剤性ALSに関しては症例的にも極めて少ない為、極めて少ない症例内だけの話にはなるが、幸いにも進行は止まる。止まった後のその後はもう少しデータが欲しいところなので言えないが、一部は止まったと同時に即時的に筋細胞が回復していく傾向ではないようだ。もう少し時間の経過が欲しい。これらは凡ゆる離脱症状に対しても言える事かもしれないが、急性的に離脱症状が出始め、経時的に悪化していく過程が自分の身体に襲いかかった場合、このまま治らないのでは?と言う観念を持ちがちになるが、これも脳内血流量を常に上げ続ける手段(加療)を用いる事で、日々のQOLは維持出来る場合もある。ただ単に、症状の軽快過程の伸びが悪く、頻回治療を行い続けなければ離脱症状を脱する迄のQOLも極端に悪い。
薬剤性ALSに限らず、薬剤性由来の副作用や離脱症状の類に関しては、自然発症性の自律神経系症状とは全く異なる治療反応性と経過を示すものである。余談とはなるが、針治療と言うのは浅層から深層まで侵襲可能な手段である為、筋細胞の弾力等も手に取るように分かるものなのだが、本態性ALS、及び薬剤性ALSで生じた細胞と言うのは極めて弾力性に乏しいものである。

5)本態性ALSの進行を考える
冒頭でも述べたようにALSには様々な仮説が存在する。上記以外の仮説も存在するかもしれないが、考え方によっては全てのALS仮説が正しいかもしれないし、全てのALS仮説が間違えているかもしれない。そのように考えれば、ALSへの成り立ちも様々あるかもしれない。筋萎縮性側策硬化症の病名自体、存在意義も考え直す必要もあるが、取り敢えず病名云々の話は扠措き、仮に大脳皮質部位で生じた神経細胞の仮死説で生じたALS(ALS様症状)であれば症状改善が見越せる一例を出す。
age 65 sex f
既往疾患なし(降圧薬は服薬していたが別に飲むほどの血圧でもない)
初期症状は頚椎症性神経根症を思わせる右上肢~手指へ放散する痛み及び手指の脱力が生じた為、整形外科を受診。画像所見上では頚椎下位に僅かな狭窄がある程度で、その器質的異常が上肢症状へ発展する事はないとし、鎮痛剤等の処方のみ。その後、両下肢の脱力と右上肢の症状が進行した為、改めて頚腰部と脳のMRI、血液検査も異常なし。しかし、症状は進行傾向であった為、神経内科へ受診し、暫く時を経てからALSと診断。私と遭った時はリルテックとマイスリーを処方されていた。患者の依頼では(正確には患者家族)長期臥床に伴う腰痛を治してほしいと言う事だった。「ALSは治らない」と言う観点は誰しも持っているし、常々言うが誤診であってほしいと言う観点で取り組んでいるのも私自身正直なところである。最早此処までくると誤診だろうが何だろうが関係ないのだが。
球麻痺も出始めていた為、これらの症状改善を見越した処置をし続けた結果、幸いにも上肢や下肢症状の進行も止まり、更に加療を続けたところ、痩せた筋力は目覚しい回復は得られていないが、一般概念で進行する諸症状が止まった。これらの状況から再度逆説的に考察した場合、「この患者が診断されたALS」は、「何らかの理由で大脳皮質で生じた神経変性」である事の証明ともなる。単純に頚部神経及び腰部神経の運動・知覚神経損傷に伴う純粋な末梢神経系の損傷に自律神経症状が加わった複合的疾患をALSと診断(誤診)しただけかもしれないが、この年代の患者が車椅子と長期臥床が強いられる程の末梢神経系損傷が起きる事は考え難く(両下肢は痛みがないまま歩けなくなっていった)、中枢神経系の問題により、このようなALS様症状を呈したと考えるのが自然である。念の為書いておくが、全く進行を止められないALS症例もある為、上記症例とは又異なる起因でALSが発症したとも考える事も出来る。
「たまたま」と言う表現は中枢神経系疾患にはそぐわないと思うが、先程も書いた通り、ALSを成立させる機序は幾つも存在し、その中で大脳皮質の神経細胞仮死で発症した症状であれば十分な結果を出せるかもしれないのは一つの希望としても良いのかもしれないが、こればかりは未知数である。

6)末梢神経の細胞仮死も時として全く治療に反応しない時もある
凡ゆる細胞は血液によって栄養され、血流によって維持される事は大前提である。皮膚も筋肉も骨も神経も血が滞れば、その細胞は死ぬ。1)~2)で神経細胞が損傷を受けた場合、「痺れ」や「皮膚感覚異常」「脱力」等を呈すると書いた。これらの純粋な整形領域疾患とて、あまりにも長期的に症状を抱え続けている(神経細胞の仮死状態)場合は、全く治療に反応しない場合もある。
ALS様症状が治るなら末梢神経系の症状なんて容易いだろうと勝手にイメージを膨らませない為にも書いてはおくが、どの症状も長期的に罹患した神経損傷(神経仮死症状)の臨床結果は厳しい。極めて時間が掛かる場合もあり、患者側が根負けする場合もある。どの時期のどのタイミングで、とまでは言えないが、長期罹患した諸症状である程、治療しても全く反応しない場合はある。しかし、僅かでも治療に反応した場合は繰り返す事により回復に至る事が出来る望みは充分ある。その為、神経仮死が明確な諸症状を抱える場合は一気に治しきらないと成功率が下がる一方となる。
ALSのような稀な症例は扠措き、高齢に伴う脊椎圧壊から派生した腰椎下位神経の損傷により、足底部の「痺れ」や「皮膚感覚異常」を抱える患者群は少なくない。そのような患者も治療に反応する人もいれば、しない人もいる。このような末梢神経系の細胞仮死状態も長期的に抱えた場合は全く反応しないのと同様、中枢神経系の細胞仮死も、長期的に抱えた場合は全く反応しない事も伺える症例はあるもので、罹患者として層が厚いのは脳血管障害の類を抱える群が顕著に教えてくれる。
先程も書いた通り、中枢神経系疾患(神経原性疾患)とて「もしかしたら」と言う大前提で書くが、神経細胞が仮死に至った時期が早期であり、且つ加療により脳内血流量を早期に上げ続ける処置を行う事で回復する可能性もあり、診断名如何に関わらず、そして世間一般では遷延性・進行性・難病と称される類のものに関しても、症状を止める事が出来る場合もあるかもしれず、その数も豊富になれば世間一般での遷延性・進行性・難病の概念も又変えられるかもしれない。

7)手術という手段で回復は求められるか
補足ともなるが、整形領域疾患に伴う現行概念の多くは神経圧迫に伴う疼痛や痺れ、知覚鈍麻であるとされている。この理論も昨今は流石に見直されており、保存療法で限りなく治療を行う風潮はある。脊椎変性疾患の多くの症状発症起因となる現行概念は神経根圧迫や椎間孔狭窄に伴う諸症状(間欠性跛行等も含む)になるとは思うのだが、神経根自体に侵害受容器は存在しない為、圧迫されても症状は生じない。完全に封鎖された場合、麻痺となる。
但し、強烈な牽引力が働いた場合、椎間孔部での易インピンジメントで神経実質に炎症は生じるものと思われ、そこを起因とし、更なる易インピンジメントと言う悪循環は生まれる。若しくは、その過程に於いて侵害受容器の存在するDRG~後角部での損傷が生じても症状を自覚する事になると思う。痺れや皮膚感覚異常、知覚鈍麻に発展するのは、神経実質の栄養欠乏に伴うものであると述べてはきたが、このような状況に陥った場合、手術で除圧等を試みても、改善は得られ難いケースも多い。除圧が必ずしも損傷した神経実質の直接的な栄養供給(回復)に寄与出来るとは言えないからだ。
手術で恩恵を受けられる症状は「痛み」迄である事を多くの患者は教えてくれる。「痺れ」「皮膚感覚異常」「知覚鈍麻」に至った症状の場合、手術一発という手法では余りにも力不足である事が裏付けられ、定期不定期問わず、神経損傷部に栄養供給をカジュアルに行い続けられる保存療法にどうしても軍配が上がる。他、手術の弊害としては術式によるかもしれないが、除圧や切除、固定やスペーサーを入れたりと脊椎変性疾患には行われるかもしれないが、経年に伴う脊椎不安定性による他脊椎高位の神経損傷等のリスクも付き纏う事から積極的に勧められるものでもないのが実情である。詳しくは各種脊椎変性疾患と周辺環境各種脊椎変性疾患と周辺環境2にも記載している。

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