藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

各種症状に於ける適正受療間隔の確立に向けて


同業他者と書くべきか、類似業他者と書くべきか分からないが、凡ゆる症状を取り上げても、様々な改善手段や手法がある。TVショッピングで販売している健康器具然り、市販薬、整形外科、麻酔科、ペイン、マッサージ、指圧、按摩、整体、カイロプラクティック他、私も全てを把握している訳ではないが、○○療法、○○式治療等、挙げれば星の数ほどあるのかもしれない。今後、法律がどう変わるか分からないし、1つ1つの手段を精査してもキリが無いし、術者によって同一カテゴリの治療手段だとしても見立てから何から異なるだろうからキリも無い話しの為、取り敢えず私達の業界の話しをする。
 
私達は保険を取り扱える。他、労災や生保の場合、治療費は無料となる。針治療の場合、スモン病に関しては公的負担であるし自治体によっては助成券が出されている所もある。実はココに大きな落とし穴がある事は、真摯に治療に取り組む人間であれば直ぐに気づいてしまう。時折メディアでも取り上げられるが、意味もなく毎日通わせ、国の財政をカラッカラになるまで搾り取る問題だとか、無料である事を良い事に、大量の薬を出したり、無駄な検査をしたり、振替請求や水増し請求という話しでもない。最早この時点で治療は崩壊している。既に治療ではなくなるのである。「治療ではない=患者の身体はどうなっても良い」のである。
 
金銭面で悪い事をして受給している人は何れ摘発される運命だから私は気にしないし、面倒臭い事をした金でご飯を食べても旨くはない。私は気持ちよく人生を過ごしたいからそんな悪事は働きたくもない。前も書いたが、これらの摘発は西日本から徐々に関東、東北へと拡大している。鍼灸の不正なんて可愛いものだが、摘発された院は厚労省等が発表する。そんな後ろめたい思いで治療をしていても気持ちの良いものではないだろう。だからこんな話しはどうでも良い。

鍼治療1つ取り上げても、術者によりそれぞれ異なる治療スタイルがあるように、患者にも様々なスタイルの人がいる。毎日来たいという人。勝手にスパンを決める人。別にそれを腐す訳ではないし、治療に対しての自由意志は尊重すべきである。仕事や家庭、都合もあるだろうからある程度は融通も効かせなければならない部分はあるかもしれないが、患者が抱える症状によって、適切な治療間隔というのは存在する。
 
その為に、仮に患者が毎日来たいと言っても必要が無ければ私は止めるし、治癒を最優先させるのであれば種々症状に応じた治療間隔で適宜来てもらわなければならない時もある。来たいのに来るなと言われたら不誠実と捉えられるかもしれないが、サービス業ではないのだから仕方ないし、低コスト且つ最短で治す事を生きがいにしているのだから、毎日何処かに行きたい人は、サービス業をやっている所に行くしかない。来るか来ないか来れないかは患者に任しているが、1~2回で治らない患者には、一応治療間隔を初診時に伝えているし、症状の改善度合いによって更に変えている。病名は兎も角、筋骨格系由来症状、自律神経由来症状、神経由来症状、混在型、中枢神経系機能の疾患、全て異なる。何故異なるのか。
 
それには幾つか理由があり、1つは治療効果の判定を見る為でもある。例えば、外用薬、内服薬、麻酔等の薬に作用時間があるように、針治療にも作用時間は存在する。勿論、どの治療手段にでも作用時間は存在するはずだから、仮に何処かの院に通っているのであれば聞いてみるのが一番早い。もしも、それすら答えられないようであれば、それは既に行き当たりばったりの治療でしかない事の証明である。針治療は様々な作用が絡みあう中、私が懸念しているのは鎮痛作用を結果的に有してしまう事で、患者に誤解を与えてしまう事である。例えば、重症例患者が初診の治療直後から無痛になったとする。これは、鎮痛作用によるものであって治った訳ではない。少し時間が経てば、鎮痛作用も消失し、本来の針治療の作用と現在の患者の症状が天秤に掛けられ、その時の患者の基礎身体状態や症状の度合いによって症状が変化する。勿論、治療期間中の日常生活での時間の過ごし方や重症度に比例するし、治療期間中のQOLの向上であったり、生活すらままならない程の激烈な症状が出ている場合等は、ある程度の治療間隔は詰めたほうが良いが、治療効果の判定を出しながら治療を行わなければ、治療が有効か無効か評価が出来ない。私は鎮痛作用を治療だと捉えていない為、直後から無痛になったとしても、聞きはするが評価の対象にはしない。大切なのは翌日以降の症状の推移であり、針治療の作用時間を超えてからの患者の身体状態が如何ように変化しているかなのである。
 
もう1つは、外傷性を除いた、日常生活の負荷から発症した筋骨格系由来の疾患が基礎にあっての自律神経症状、筋骨格系由来の疾患が基礎にあっての神経由来症状、そして、患者が何を治したいか、何処まで治したいかによっても異なる。針治療に来る患者は、ある程度覚悟の決めた重症患者が多いから全部治してもらいたいというケースが多いものではあるが、全ての症状がいきなり消える事はなく、オーバーラップしながら順序立てて改善していく。仮に腰痛と下肢の痺れがあった場合、治療を行えば腰痛と下肢の痺れ、どちらから治るか。腰痛から治り、その後、下肢の痺れが治る。理屈は長くなるので割愛するが、これが上肢の場合、逆になるケースが多い。そもそも、痛みと神経痛では、受傷範囲が異なり、一般的には受傷範囲の小さい部位から回復が遂げられる。痛み要素と神経痛要素では、後者のほうが発症範囲は広くても、患部の範囲は圧倒的に小さい。勿論、治療期間中の身体の使い方がどうであるかにもよるが、神経機能の回復、阻血からの回復には筋骨格系疾患の回復が確実になってからである。
 
このような複合的要素を持つ場合、治療間隔は後者の症状で決める。そうでなければタイムラグが生じる神経機能の回復判定が出来なくなるからである。筋骨格系由来症状(陳旧例の場合、多くは神経由来との混在型、恐らくDRGの賦活、アロデニィアに近い状態でもあるが)は、針治療の作用時間にピタッと当てはまる。その為、改善期間と憎悪期間の予測も簡便につく。しかしながら、神経由来症状は治療後の身体の使い方1つで差が生まれ、多くは職業的な身体動作に左右される。回復期間も5~10日後位になってくるケースが多いが、負荷の多い人の場合、2週間要する時もある。負荷が多いというのは肉体労働をしている人よりもデスクワークやドライバーほうが極端に悪い。余談ながら、1週間に1回という治療スパンは誰が最初に始めたのだろうかと、いつも思う。この1週間に1回という既成概念が治癒の邪魔をしているケースは意外にも多い。その為、本来であれば全ての患者と日々、密なVAS値の変化を取りながら治療出来れば最も良好な結果を残せるのだが、現実はそうもいかない。皆が皆メールを出来る訳ではないし、毎日電話貰っても嬉しくない訳ではないが、それもそれでちょっと困る。本来であれば入院する位が丁度良いのかもしれない。
 
その為、治療は近隣の通院圏患者(歩いて数分とか駅から数分、会社と家の間にある等)や往診患者が、一番恩恵を受けられる対象になる(近所のジジババほど言う事を聞かないケースも往々にしてある…それもそれで言う事を聞かなければどうなるかに関してもデータとして価値もあるが…)。そのように考えると、遠方から来る患者ほどデメリットが多い。確かに遠い所から来ている人も多いし、過去の記事を読んでいる方なら分かる通り、私も遠い所に積極的に出向く。但し、それが片道500キロとか1000キロのレベルになると、流石に週に2回とは易々と言えないし、恐らく私も行けない。如何せん、この業務は拡散性が極端に悪い。治りたいと心底願う場合であったとしても時間と距離で一気に制約を受けてしまう。基本的に1対1の治療である為、時間も人数も限られるのが非常に歯痒いものである。
 
その歯痒さがメリットにベクトルが向く場合もあるのだが、個人的に拡散性の低い手段は遣り続けるべきではないと考えている。治療ベッドを何台も並べて患者を回すスタイルもあるが、得られる情報も希薄になる為、好きではないし、置針するスタイルではないからベッドに寝かせている意味もない。では、より一層の効率性を求めるにはどうしたら良いかを考えなければならない。恐らく、今の遣り方では双方が疲弊し、発展し難い。もしかしたら今のままでも発展は出来るかもしれないし、現に出来てきたのだから今のままでも良いのかもしれないが、もっと時間を早めたいのが現実である。実現可能かどうか分からないが、備忘録的に幾つか提案してみたいと思う。
 
1)先ずは、筋骨格系由来と神経由来症状、自律神経症状、中枢神経系疾患の治療間隔の適正化と患者のトータルコスト削減に向けて考える。治療はすればするほど院の儲けにはなるが、AからBという症状の改善を経る場合、2ヶ月という期間が掛かるとしよう。この期間、毎日治療を受けても、若しくは10日に1回の治療だとしても、2ヶ月後の結果が同じだという現実を患者が知ったらどうなるだろうか。神経由来症状は特に顕著であり、私はこの事象を相当初期の段階で見抜いていた為、相当前からこのような話しを聞いた方もいたと思う。その為、痺れで毎日のように何処かの治療院に通ったという話しを聞く度に、術者が分かっていないか、若しくは分かっていても…と勘ぐってしまう。患部にクリティカルな処置が出来ていれば経時変化で回復に運ぶのである。仮に1回5000円の治療だとした場合、60回×5000円=30万掛かる。それが10日に1回の場合、6日×5000円=3万で済む。私は後者の実現を求めている。患者は治療回数を重ねる事を重視している節があるが、以前から言っている通り、大切なのは治療回数ではなく治療期間なのである。細胞は今日明日生まれ変わるものではない。ターンオーバー促進には治療回数を重ねる事も大切だが、回数よりも期間で見たほうが圧倒的に予後は良い場合がある。
 
2)患者間と綿密にVAS値の変化を遣り取りし、リバウンドの状況や、リバウンドを抜けた後の状態、経時変化に於ける症状の推移、針治療の作用期間を過ぎた後の症状の推移、他、仮に何処の部位に対して針治療で処置をしたとしても全身状態を把握する。前項でも書いた通り、治療箇所によっては針治療は副産物的要素が非常に多く、結果的に様々な症状が改善していく。この事で更に適切な治療タイミングが見込まれ、無駄な治療が無くなると同時に、全患者から日々の情報を貰い続ける事が出来たら、とんでもない有用なデータが出来上がり、他の患者に対してもフィードバック出来る為、雪だるま式に価値が膨らみ続ける。患者が針の作用を極端に打ち消す行為をし続けない限り、筋骨格系疾患や神経症状に対してはある程度の予測下(治療回数や治療期間の事)で治療は進められる。では、これらの予測を更に上回る為に大切な事は、丁度良い治療スパンの選択と、患者の日常生活時に於ける行動でしかなくなる。
 
3)最優先事項を患者から正直に聴取し教えてもらう。それは治癒を最優先とするのか、仕事なのか家庭なのか。現実問題、多方は「治癒」というものを最優先出来ない。仮に治癒を最優先するのであれば、私は座る事すら禁止し、痛い内は寝たきりを求めるからである。いつの間に、どんな腰痛でも歩いて治すなんて概念が出来上がったのだろうか。誰がそんな要らない行為を勧めているのか謎である。血行動態は一時的に回復するから症状改善の自覚はあるが、痛い内は寝ているに越した事はない。でなければ、損傷が拡大するだけだ。その為に、患者は治療期間中、どのような生活を送るかを正直に教えてもらう事は大切だ。
 
4)治療意志がない内は治療をしないという選択も最早ありだと思うし、結構大切なポイントでもある。興味本位や、無理やり連れて来られたってのは、本人の意志が伴っていない。どんな理由での来院であったとしても、大切なのは本人の意志である。針治療以外の全ての事柄に対しても言える事だが、意志が伴わなければ全てに於いて負の要素しか生まれない。治すには情熱も大切。それは術者だけが情熱を燃やしていても無理。肺がん患者がタバコ吸い始めたら誰だって治療意欲は失せるし、肝臓が悪いのに目の前で酒を飲まれ始めたら同情の余地がなくなるのと同じである。かと言って、患者に対して夢物語を押し付けるのも宜しくないが、業界にはゴマンといる。【積極的治療の功罪】でも触れた事でもあるが、如何なる痛みや痺れに対してでも、それが器質的異常の有無に関わらず外科的侵襲能力を用いる積極的治療手段である以上、ゆっくり治したいという人には向いていないし、そんな事を私に言われたところで、「ゆっくり治すだけ痛みは長期に引きずり、損をするのは患者でしかない」としか言えない。ゆっくり治す事にメリットは何一つない。
 
この辺りから変えられたら、明らかに状況は変わるだろうし、そこで初めて適切な治療間隔というものが見えてくるのではないかとも思う。とは言っても相手も同じ人間である以上、理想論(と言うか身体を休めるって言う当たり前の話しなのではあるが)でしかないのだが、これらの理想論を現実として受け止め、信じて乗っかってくれた人は早期且つ、低コストで回復しているのも現実なのである。

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  ~針治療から病態定義の見直しを~