藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

臨床医学というのは常に不安定な生き物である


人を診るのも人であり、人を治すのも人。
一個人が下した診断に右往左往する人もいるし、跳ね除ける人もいる。
人が人を診る場合、どうしても既往の疾患に左右される人もいるし、
既往の疾患に現症状をこじつけてしまう人、こじつけられてしまう人もいる。

そんな、既往や年齢での切り分けで、どれだけの患者が回復を妨げてられているか、
追い込まれている患者は少なくないかという事がヒヤリングから伝わる。

例えば、今の痺れが全て糖尿病性の神経障害である訳もなく、
脳血管障害後の神経障害だけでもない。しかし、僅かでも、これらの既往がある患者は損。
積極的な治療対象にしてもらえず、諦めさせられている患者が少なくない。
全ての症状を既往の疾患に宛がわれてしまい、
その痛みも痺れも他疾患による症状である事を認められない。

そのような状況に更に輪を掛けたような「高齢」という切り分け方が
オーバーラップした場合、現行医療は全然追いついていない。

確定診断が症状改善へと繋がるかと言えば全く別な話であるが、
「確定診断⇒治癒」という図式や流れをイメージしてしまうのはネガティブな症状を抱え、
弱い心理状態に追い込まれた人であれば得てして自然である。

健康とか不健康という境は患者自身に委ねられるものではあると思うが、まして、
患者自身でしか把握出来ない諸症状に対し、不安を煽る業界というのは随分とタチが悪い存在だ。

それは普段から危険視している極めて悪質な性格を持つ向精神薬の問題や
精神医療への誘導だけではなく、血圧やコレステロールロコモティブシンドローム等、
大カテゴリから中カテゴリ、小カテゴリに至る迄、全てに関与してくる事である。
恐らく何処にでも学会は存在し、対立する学会がまた存在し、
常に火花を散らせて牽制し合い、足を引っ張り合っているのだろう。

まして、世間一般で難病と言われる病気を持つ患者や、
がん患者を取り巻く状況を見ていれば露骨なものであるし、
患者も藁にも縋る想いであるから、治療内容がどうこうと言うよりも、
結局はコピー次第で人は絆され、煽られ財産を叩いてしまう状態に陥るのは今に始まった事ではない。

私自身は整形外科領域や自律神経系領域、向精神薬領域程度しか知らないが、
恐らく、どこも同じような状態になっていると思う。それを否定する事はない。

が、どの人間も大真面目に取り組んでいるという事も問題なのかもしれない。
互いに主張はあるだろうし意見もあるだろう。自分たちが述べている内容が
1番正しいと振りかざす事も、これまた自然な行為であるのだ。だから軋轢が必ず生じる。

副作用を認めず、更なる薬物を増量する事も、大真面目に取り組んでの結果かもしれない。
副作用を認め、減薬指示を出す事も大真面目に取り組んでの事かもしれない。
勿論、減薬をする事で結果的に症状が軽減すれば、それは「副作用であった」という図式は成立する。
しかし、減薬をする事で離脱症状が経時に伴い生じた場合、原疾患の悪化であると捉えられ、
降り出しに戻されるケースとてあり、そこに至る経緯や誘導も又、
大真面目に取り組んでの結果かもしれない。

この頃には対応する医師も変わったり、患者も色々と勉強し始めている時期かもしれないから、
対応する人間の言動1つ取っても、以前とは汲み取り方も解釈も理解のラインも
変わってくるかもしれない。飲み続けても別に良くなる訳もないし、
急にふらつきを覚えた足の原因が薬剤性由来である事を否定され、歳のせい、筋肉の弱体化だとされ、
寧ろ新たに謎めいた症状が次々と引き起こされてくれば、誰しも疑問に思う時だってあるだろう。
要は、目の前の人間に対して不信に思い始めるタイミングとて存在し、
再度信頼を得るタイミングかもしれない。

痛みでも痺れでも脱力でも麻痺でも、もしかしたらそれに付随する諸症状に関しても、
知れば知るほど、そして知ろうとすればするほど「分かっていない」という事に気づく。
私自身もである。知れば知るほど「分からない」と言う答えが答えなのではないかと思う。

例えば針治療で結果が出るという事は、
針が身体内部に刺入され派生する生理学的作用機序と
患者の抱える諸症状がマッチングした事を意味する。
相応の根拠が患者の症状に準拠したものである証拠なのかもしれないが、
その「結果」が「答え」として直接的なイコールで結ばれたかと言えば、私はそれすらも否定する。
結果が出ようが何だろうが、常に自分自身の見立ても治療内容も否定し続けている。

もしかしたら、もっと早く回復出来たかもしれない。
1回でも早く。考えている事はそればかりである。

足すことが良いのか。引くことが良いのか。もしくは何もしないで寝かせておく事が良かったのか。
実はそれも分からないのである。このような事を書けば、今まで何してんだと言われるが、
知れば知るほど分からなくなるのである。知識は視点を狭め、柔軟性を失してしまう。
答えは患者しか持っていないのにも関わらず、手元にある本が結果を出すとは到底思えない。

私は、現状存在する解剖生理と言う基礎医学でしか患者の身体を見ていないから、
突飛とした治療内容や理論ではない事も確かであり、治らないものは治らないと言うが、
もしかしたら先日も書いた通り、ツボを買ったりオフダを買ったりして治る人間もいるのかもしれない。

現行の治効理論では、既製品の針では理論に耐えられない。
ならば理論に耐えられるように作ってもらう。
理論を現場で発揮するには、針というツールすら既製品では不十分なのだ。
そのように、地味に地味に推し進めている事は確かだが、
何故、大手を振って様々な治療理論が生まれては消えを繰り返しているのかという
周囲の状況に対しても考えたくなる。そして1つ分かった事がある。

生まれては消える理論が此れほど迄に多く存在するのは、
基礎医学が土台にあるからなのではなく、
過去の臨床医学からの枝分かれ的要素に上乗せさせられているからなのではないかと思う。
基礎医学を土台とし、昇華させ続けた臨床医学なのではなく、
既存の臨床医学を土台とし、臨床医学に昇華させた場合、
それは昇華ではなく、発展でもなく、衰退に至る可能性が高い。

臨床医学というのは常に不安定な生き物である。

不安定な土台に不安定な理論を載せても安定する事はないだろう。
だから、生まれては消えるを繰り返す結果となる。ご存知の通り、臨床医学はビジネスである。
ビジネスだから幾らでもデータの捏造が生じる。それは薬物でも手術でも針治療でも
少しでも良く見せたいのは当たり前だからである。嘘も100回通せば本当になる。

しかし真実は異なる。真実という切り札は、多くの臨床医学を破壊する程の力を持っている。
その為に、基礎医学者と臨床医学者は常に犬猿の仲なのかもしれないし、認め合わないし、
臨床医学者も互いに犬猿の仲なのである。何故なら自分が1番だと思っているからだ。

以前、患者に言われた事がある。「他の先生は常に自分が1番だと思っているわよ」と。
そんなに偉そうにしている先生がいるのなら会ってみたいものだが、
偉そうにしているからと言って、一体何の価値があるのだろうか。
自己のブランディングは、患者の人生を背負う業界に於いては、
自己の成長を止めるだけでなく、患者の改善を遠のかせる結果となるのではないのだろうか。

そして確定診断という名称こそが、
丸かったり三角だったりトゲトゲした患者の症状を四角の枠に無理に押し入れてしまう結果に陥る。

その為、必ずどの疾患に対しても、溢れてしまう患者が一定層存在する。
理由は分からないでもない。一応、傷病名を付けなければ始まらないし、保険制度上の問題もある。
明確な受傷機序がない限り、検査から診断に至るまで難航するのかもしれないし、
僅かなキッカケすらも、無理に診断に至る要素に組み込んでしまうかもしれない。
理由が無ければ話は進められないからだ。

各種神経学的所見を取る為のテストや、レントゲン、CT、MRI、ミエロ、様々な検査を行い、
現在の臀下肢痛が「腰椎椎間板ヘルニア」由来だとし、確定診断が付いたとしよう。
さて、そのヘルニアという構造的異常が生じており、且つ、
患者が厳しい症状を抱えていた場合の現行医療に於ける選択肢に浮かぶのは手術であり、
その手術の術式の有効率が65%であり、再発率が75%だと公表されていた場合、
私達が考えなければならないのは、先ずは、こぼれ落ちた35%の患者をどう見るかである。

検査上、手術上で形式的にクリアした物事に対してでも、尚且つ症状を訴える患者に対しては、
侮辱的であり屈辱的な発言が患者に浴びせられている事は今に始まった事ではない。
35%の無効患者をキ〇ガイであると治療の終了を申し立て精神科に回してしまうか、
高齢であれば高齢に責任を押し付けて力価の強い薬物を浴びせるか。

言いくるめなければ、そうでもしなければ免責されない。

どれもこれも真実ではなく、単に現状の医療の限界が其処までの
ラインでしかないという現実を知るというだけであり、

「そもそもの構造的異常が臀下肢痛の要因ではない」と考えるのが自然なのである。
しかしながら、犬猫の神経根を散々弄り、傷付け、損傷箇所から派生する発痛部位を鑑み、
異所性発火を唱え、それが人間のヘルニアの神経圧迫が下肢痛を引き起こすという無理なこじつけは、
ここまで情報が割れてしまった段階では、既に厳しい理屈であり、世論が許さなくなってきている。

それでも何故、手術が行われ続けているのかも考えなければならない。奏功する患者もいるからだ。
では今度は、何故手術で奏功するのかを考えなければならない。
現在、椎間板ヘルニアの除去手術に対する術式は5~6程度存在する。
全てに有効率も再発率も異なり、未だ古典的なLOVE法が有効率が高く、
再発率が低いのかも考えなければならない。

そして、何故LOVE法であればそのような数値が叩き出せるのかと言う事を、
ヘルニアという構造的異常の有無を無くして真摯に考えてみれば、往々に答えが出る。
有名な話として、ダブルブラインドで除去術をしない患者とて、手術という形式を踏んだだけで
症状が消失したという患者も65%存在しているデータもある。
手術まで行わなくても、薬物治療とてダブルブラインドは行っているからデータを見れば分かるが、
プラセボ群と比較しても、驚異的な差も出ていない。

多くの症例発表と言うのは、治療後即時的、短期的なデータしか取れない場合が多く、
中長期的な追跡結果迄となると、患者の協力も必要となる為に致し方ない場合もあるのだが、
患者にとっての希望というものは、治療後2~3日間だけの改善ではないのである。

しかし、即時的及び短期的な部分にだけスポットを当てた場合、
大方の術者は驚異的な有効率を叩き出している事も事実なのであるが、
それは術者にとっては良き宣伝材料になるが、患者にとっては価値のない数値でもある。
短期有効率が100%でも明日の再燃率、明日のVAS値が10⇒10のままでは何の価値もない。

改めて書くが、患者にとっての望みは中長期的な回復である事には変わりない。
特に針治療という手段は手術よりも面倒に感じる患者も多くいるようだ。
勿論、途中で脱落する患者もいるだろう。しかしながら、そもそもの問題を考えれば、
手術にも、まして薬物治療にも答えが転がっていない事が分かる。

椎間板ヘルニアの話に偏った為、このまま話は続けるが、
幸いにもこのような話は既にバレている為、手術を選択するケースは減少傾向かも知れず、
現在は限り無く保存的治療で様子見していく事が一般的である。

多くは薬物治療とブロック注射になるだろう。さて、リリカやトラムセット他、
コッソリ向精神薬を処方されていたという薬物治療の話は食傷気味だから今は書かないとして、
ブロック注射という観点で見てみようと思う。多くはキシロカインやリドカイン等の麻酔薬、
他、水溶性や懸濁性のステロイドを用いるのが一般的だと思う。

では、一旦ここの段階で立ち止まり見てみよう。
実際にブロック注射で奏功を極める患者は少なくない。
と言う事は、そもそもが構造的異常と諸症状との直接的な因果関係を自ら否定している事実が、
この段階で生じているのである。ヘルニアで痛いと説明しておきながら、
ヘルニアで痛いという説明を自ら否定している行為となる。

とは言え、困難を極めるのは、既にヘルニアを手術によって除去した後に、
除去した事による椎体の不安定化から生じる他高位の神経損傷が1番面倒なのではないだろうか。
れは加齢に伴う症状自覚の有無問わない椎体の圧迫骨折の頻回により
円背傾向を示した層にも言える事かもしれないが、常に不安定であるという事は、
周囲の軟部組織とて易損傷傾向である事には変わらない。

それが椎間孔やDRG由来であれ、常に不安定な脊椎が存在する限り、損傷確率は高度を示す。
その為に、2度も3度も手術しても症状の再発が認められる患者に対しては、
固定術という手段が用いられてしまうのである。

著名な人間を引き合いに出すが、では、ここで歌丸はどうか。
4度目の手術で結局は固定術時のボルトを全て外してしまった。邪魔なのである。
固定術も除去術同様、固定した以外の高位が極めて脆弱性を有む為、
結果的には新たな神経症状を惹起してしまうケースが多い。
これらは分離・すべり症とて同様な経緯を抱える患者が多い。

直後は良いが、経時経年の変化で悪くなるケースの大半がこれだろう。
症状の発症部位を見れば神経損傷の高位は1年生でも分かるのだから、
何故、それを今の医療は隠してしまうのか、患者に教えてあげないのかというのが、
また1つの問題を生むのである。(※臨床上の神経分節の話は長くなるから割愛)

と言う訳で長々と書いたが、針治療に来る患者はそれすらも有効ではない、
要は他の治療手段では奏功しない、凡ゆる治療手段で否定された患者が来る訳であるから、
飛躍的に重症度が高い層が占めてくると同時に、発症時期から時間が経っているケースが少なくない。

これはこれで困ったものだが、
1番の問題は過去の手術も薬物治療も肯定的に現在も捉えてしまっている場合かもしれない。
手術という大イベントを征した事、お薬を飲み続けていれば「治る」という思考が未だにあると、
リスクというのは抱え続ける事になる。「治る」「治す」というエンドポイントが存在していない以上、
仮に現時点の諸症状が針治療で改善したとしても、早い段階で又コケる可能性が高いからである。

時としてステロイドの管理が甘く、骨壊死や骨粗鬆症を引き起こし、椎体の圧迫骨折が高頻度で
生じた事に気づいた患者は薬物治療のリスクを学ぶものであるが、全員がそのような境遇ではない。
まして、明確な管理がされないNSAIDsやオピオイド系、向精神薬となると混沌とする。

やはりこのように考えると、針治療は未だまだ信頼性の薄い治療手段である事が分かる。
最終手段であると捉える人がいる一方、第一選択肢としてチョイスされない理由というのは
針治療の力不足でしかない。まして、作用機序も反作用も明確に公示されておらず、
術者によって是程までにバラバラな存在として立っている以上、まだまだ先の事なのかもしれない。

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  ~針治療から病態定義の見直しを~