藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

中枢神経症状の機能回復自覚のタイムラグ理由と、既存病態定義に随伴する治療抵抗性の理由

脳神経含む脳及び脊髄由来症状(以下 中枢神経症状)は解剖的にも間接的栄養となる事から、機能回復自覚はタイムラグが生れ易い印象があるが、罹患期間や損傷度、再生能力により更に左右される側面も否めなく、又、此れだけで説明が終わるほど単純ではない。終始治療反応性と経過を伺い続けていれば、神経修復機能を有すると思しき炎症性cytokine等を意図的に派生させ活用出来るのは末梢神経迄の印象を受ける。脳神経は解剖的に末梢神経に分類されるが、治療ツール上からの生理的反応を鑑みれば、中枢神経に混ぜるのが適切かもしれない。
 
末梢神経症状と中枢神経症状では、治療ツールとしての意味合いが異なると思われる。度々書いている内容で、交感神経節のみならず、後根神経節や神経根が学問的に末梢か中枢かはさて置き、近傍まで物理的に針尖を直接的に送りこめれば末梢とし、解剖的にも明らかに間接的手段しか取れない位置であれば中枢として話を進めるのが分かり易い。
 
刺傷で随伴するcgrpやprostaglandin、bradykinin、histamine、serotoninらの血管拡張物質を利用出来るのは、末梢神経症状が限界かもしれない。求心性伝導路の機能を鑑みれば、更に四肢抹消の話で理論展開する事は可能かもしれないが、話が散らかる為に割愛する。何れにせよ、後者の利用は個で保有する刺傷に於ける修復機能や内分泌能に左右される為、作用時間も若干の左右はあると思われるが、臨床上としては、末梢神経症状であれば如何に罹患部位近傍で栄養を派生し送り込めるか、中枢神経症状であれば如何に罹患部位に対してどれだけ栄養を送り込めるかが鍵でしかないと思う。
 
治療ツールとしての事情のみならず、受療タイミングによる身体状態によっても大いに変動する。例えば、「治療前日は緊張して眠れなかった」。「誰々に紹介されたから断り切れず嫌々来た」。このような状態でも大いに内~外分泌は関与する。当たり前に症状も変動するだろう。緊張によりカテコラミン分泌が高まれば、院の玄関を開いた時から痛みもなくなるかもしれない。
 
只、患者感情による生理的反応は私にはどうする事も出来ないので任せるしかないが、ツール上は常に安定性と確実性、再現性は保持出来ないかと考えている。一律にし得ないか、又は更なる早期回復は見込めないかと考えた場合、例えば、創外固定に類似した器具を用い、頸部の処置部位に持続的に保持する事で持続的な栄養が可能かと推測されるが、刺傷による随伴症で中枢神経のco2濃度を高め、血管の収縮後拡張(escape現象)による栄養の求め方を目的とする場合、コンスタントに当該行為で生理的反応は起こせず、衛生管理面でも適さず、日常生活にも支障が出ると思われ、デメリットが上回る。
 
この場合、持続硬膜外麻酔と類似した作用を持たせる事は不可能となる。また、持続作用は鎮痛を求めるには適しているが、非疼痛性症状の改善自覚を評価対象に含めた場合、改善自覚及び改善自覚タイミングのみならず、憎悪自覚及び憎悪自覚タイミングも把握する事で、憎悪因子を患者ベースで把握し、症状のセルフコントロールの可否を判別する事も可能となる。臨床的には憎悪因子を把握は改善因子を把握する事よりも大切だと考えている為、常に良が続く事は、日常生活での破壊行為を助長する懸念に繋がり個人的には好まない。
 
脊椎脊髄の縦軸絡みのエラーを伴わない自然発症の中枢神経症状の大半は、高頻度に暴露された身体~精神~環境ストレスが関与するのは自律神経の機能的側面を鑑みれば難解ではなく、持続的な血管収縮による好発罹患部位、即ち易症状自覚部位を事前把握する事が可能となる。只、重要な事は自然発症の場合、恒常性も常に関与している為、放置しても、又、発症後は発症理由を回避する事でも十分に自然寛解に持ち込む事は可能である。人間は常に回復に向かう機能を備えていると前提とし、人間は常に悪化因子を暴露しながら生活していると前提とした場合、臨床とは兎角経過予測が難しい。その為、自然寛解が見込めない症状程、治療反応性は判定し易い側面もある。
 
自然発症の中枢神経症状の高頻度罹患部位の説明の前に、末梢神経症状の代表格である整形領域疾患で例を挙げると理解は早い。例えば、脊椎はC5/6、L4/5、L5/S1由来の症状が好発する。好発理由は可動性が高い事に由来すると推測する。自由度が高い=不安定性が高い=壊れやすいと因果を結びつける事は容易い。このように、非外傷性の内的エネルギーで起きる受傷は、どの患者でも大概が同一部位となる。例えば、ムチムチと呼ばれるような受傷、尻餅と呼ばれるような受傷をした場合、単根損傷が多根損傷となり症状が広範化するだけで、臨床上で頭を悩ます問題が増える訳でもない。治療部位が増えるだけだ。
 
では、中枢神経症状はどうだろうか。三叉神経由来が好発する印象を持つ。これは脳神経の中でも担当範囲が最大である理由と推測する。最大だから好発すると因果を直接的に結ぶのは短絡的だが、最大故に最も誤診例が多い為、あらゆる治療に抵抗し、巡り巡って私の所に来るだけなのかもしれない。脳神経の発症起因の代表は、外傷や血管による圧迫、梗塞、腫瘍、感染が多数を占めるかもしれないが、三叉神経由来の自然発症は特段珍しくもない印象もあり、且つ断続的疼痛を示唆する一般的な見解とは異なり、臨床症状は持続的疼痛も珍しくない。知覚・運動を有する混合的な三叉神経は、あらゆる分野で偽陽性として混乱を起こす。眼科、耳鼻科、外科、歯科を網羅する。既存病態定義に沿わない、薬物治療他に抵抗性を示す、では精神科、となるのは乱暴だが一般的な段取りだろう。
 
次点として内耳神経、迷走神経、視神経、顔面神経、舌咽神経由来辺りかもしれないが、出所が隣近所である事には変わらない為、発症起因と発症理由を不思議がる必要もないと考えている。先に述べた外傷や血管による圧迫、梗塞、腫瘍、感染であれば単神経由来の症状のケースが多いかもしれないが、自然発症ほど罹患神経は選ばれる事なく、多神経に及ぶのは珍しい事でもない。寧ろ自然発症で純粋な単神経損傷となるのが異常である。それらが織り交ざり、及び、大脳や小脳、皮質脊髄路や脊髄視床路、脊髄小脳路等々の異常も含まれ、病名が異なる程度としか捉えていない。表在表出された症状群を抽出し、又は訴えた症状又は表現方法にて、病名や障害名が付けられる程度と考えている。
 
このような書き方をすると幻覚全般を否定しているように見受けられるかもしれないが、幻視、幻聴、幻嗅、幻味、幻触、体感幻覚等の存在を否定してはいない。神経走行又は神経機能的に明らかに沿わない症状を訴える患者は珍しくなく、また、他人の神経走行や機能に口出しをするのもお節介かもしれず、在る無しを症状を患った以外の人間が決め付ける事は極めて烏滸がましい事であるし、発展を自ら妨げている思考となる。只、治療部位とその反応性を伺う限り、神経走行に沿う沿わない、また、幻覚の有無及び真偽問わず、治療反応が生じれば罹患部位は中枢神経である事には変わらず、中枢神経症状である(あった)と判別する事は容易い。
 
様々な原因で幻覚は生じるかもしれないが、各種病名や障害名に拘らず、治るなら治るでそれで良いだろうと考えている。中枢神経症状の場合、臨床上は各種罹患部位に単独に栄養を送る事は出来ず、全般へ及ばざるを得ない為、結局は治療を行い、改善したなら、それが末梢神経由来か中枢神経由来かでしか判別出来ない事には変わりない。また、明確な脳疾患、脳損傷のエピソードが存在せず、現場で症状を訴えるまでとなれば、向精神薬の副作用や常用量離脱、離脱症状は高率で絡んでいるのだから、薬物の反応部位を鑑みれば原因は中枢神経であると判断する事は逆に難しくない。
 
他人物であれ罹患部位が偏る事を一般的に好発部位と称するのかもしれないが、上述理由のように、可動性の高低や自由度等の元来の構造的な問題が基礎となり、奇形や破格、摩耗や圧壊等々の事情が重なり、また、患者が暴露する精神ストレスや環境ストレスにより、寛解速度、寛解の有無、寛解が不可能の理由、再発理由が仮説付けられる。また、自然発症性の症状は経時経年による生活の幅の狭小化が生れ易い。構造的理由を抱えていれば尚更であり、要は進行し、キャパが低下する。整形領域とて今まで10分で痛くなっていた腰も、5分、3分となれば、それは機能/器質問わず進行である。
 
基礎的身体状態や成育環境、背景も異なる為、仮に同一部位の罹患とて比較対象出来るものではない。例えばRSウイルス、ライノウイルス、インフルエンザウイルスとて、皆が皆、全く同じ症状を出す事もなく、全く同じように治らない。どんな病気や怪我も壊れ方と治り方は人それぞれである。そして、高血圧も高脂血症も治療薬が存在しなければ風邪の治療薬も存在しない。その意味が分からなければ治る治らないの話はそもそも出来ない。肺炎に発展する人もいれば、潜伏したまま症状自覚なく脱出する人もいる。感染しない人もいる。それと同じだと常々考えている。
 
現行医療は救急救命に力を発揮するのは既知だが、一般外来に於けるカジュアルな症例も、中心の治療となる薬物療法が反映されている側面はある。此処が1つのガンであり、症状の長期化を促す大きな一因であると思う。急性期では力を発揮するが慢性期では力を発揮しないのは、病態定義が正しくないか適当か、目先の鎮痛に踊らされているか、患者の効果 < 患者の満足を見越したサービスかになる。慢性期でも急性期と同様の療法の為、リスクが上回る。リスクが上回れば、元症状を残存させたまま異なる障害の発症率が上がる。
 
例えば年季の入った腰痛でNSAIDsを処方されても表面上の痛みなら消せるかもしれない。只、表面上しか消せない場合、多くの患者は長期服薬に及ぶ。その事で、胃腸障害も出れば、腸閉塞や脳幹梗塞のような重篤なリスクも生まれる。否、急性期でも生じるかもしれないが、長期服薬は暴露の確率が上がる。比較的発痛理由が明瞭な整形領域疾患で鎮痛を求める事は、更なる構造的な摩耗や圧壊を生じる悪循環が継続し、治癒遅延どころか、一時凌ぎは出来たとしても、廃退した構造的理由により再発率は高まり症状も凶悪化する。目先のみならず、患者将来の人生を含むトータルリスクが高まる。
 
これが「症状持続の本態が炎症か非炎症か」によるものであり、理屈さえ知れば、否、最も実体験している患者自身が気付くべき部分となる。慢性炎症なる言葉も存在するが、炎症を止める事が炎症となる元栓を閉める事ではなく、炎症が継続する理由を絶つ必要があり、また、杓子定規の慢性炎症とする言葉が自身の症状にとって事実か否かも見定める必要もある。また、個人的には慢性炎症という言葉は理解に苦しむ。炎症が起きている内は全て急性期ではないかと思うが、今では優秀な抗炎症薬は沢山あるので鑑別も出来るだろう。
 
では、上述内容を一度まとめる。1)持続的栄養は可能かもしれないが、衛生管理及び症状変動評価が乏しくなる 2)改善も大切だが、何故悪化するのかを知る事が大切 3)末梢~中枢神経問わず、好発発症部位が存在する事を知る 4)急性~亜急性~慢性と移行するに辺り、何故自然改善しないかを知る 5)個体差がある事を知る 6)今が炎症か非炎症かの鑑別を患者自身で行う事は難しくない 勿論、これだけでは情報として全然足りないが、これらを踏まえれば、脳障害や脳神経障害、脊髄障害への処置と機能回復自覚のタイムラグ理由と、既存病態定義に伴う治療抵抗性の理由が簡便に分かる。

脳血管障害や脊髄損傷の類が中枢神経症状としての代表となり、明瞭な器質的損傷は、古くは一度損傷したら回復不能と言われた分野も、神経幹細胞の存在により、回復出来る事が示唆され久しい。只、様々な内外のソフト・ハード面での事情や障壁により回復度合いや安定性も異なるかもしれない。また、中枢神経症状と称するには機能/器質含め、極めて漠然で各論的に述べる必要はあるかもしれないが、何故回復しないのかを知る事も必要かもしれないし、又、栄養を送り続ける事で回復出来る事実も希望に繋がるのではないかと思う。

~ 考察 中枢神経症状のリバウンドとタイムラグ ~

交感神経と副交感神経の両者が混在し付着する脳血管は、日々の生活で良くも悪くも収縮と拡張を適宜繰り返し、生体を外部からの悪化因子に耐え、保護し、恒常性に努めている。頸部交感神経節処置による脳内血管の収縮後拡張事象は、非日常的な血管拡張を生むと推測され、脳神経含む中枢神経全般の罹患部位の回復が見込まれる事が臨床反応からも仮説が成り立つ。

非日常的な血管拡張且つ持続的な血管拡張は、針刺し行為に随伴する刺傷で生じる炎症期~修復期の期間が関与する事が伺われるが、個々のコルチゾル分泌能にも左右されると思われる。只、傾向としては2~3日間で収束すると思われ、また、※)症状変動も2~3日は不安定となる印象を受ける。更に以後2~3日間は、治療由来の血流量増進期が過ぎ、血流量の減衰期に入るに従い、当該罹患部位(元々抱えている症状の原因となる損傷部位)の症状自覚を覚え始め(症状が元に戻る感覚を覚え始め)、更に2~3日以後は、約1週間~10日程前に行った治療による、基礎的身体状態の評価期間としては適切な時期に入る。

では、 ※)症状変動も主に2~3日は不安定となる印象を受ける を考察する。リバウンド現象である。リバウンドとは、現在抱える症状が、治療後に一時的に更に強くなる状態やタイミングと捉えるのがイメージとして分かり易い。適切な表現ではないかもしれないが、何処も悪くない人(症状自覚のない人)や、極めて発症初期及び軽症例の人は、リバウンド自覚は殆どなく回復に向かう。元々悪くないのだから、血流増進が伴っても伸びしろが存在しない為、変動自覚がそもそもない。また、受傷度も軽症の場合、ネガティブな症状自覚の閾値に達する事なく改善自覚を覚える。

反面、発症後期の人、損傷度合いが著しい人は、リバウンド自覚が高率で起きる。また、仮に長年に渡り症状自覚があったとしても(例とし、高齢者が好発する内耳神経の蝸牛神経側の経年に伴う血流量低下による難聴等)、神経細胞そのものが極めて傷んでいる場合もリバウンド自覚はないと推測される。仮に、同患者が他の脳神経由来症状を抱え、他症状は経時経年で治療によって回復したとしても、蝸牛神経のみ損傷が著しく、反応しない事もある。その為、1つの考え方とし、治療をする→罹患部位に血液が流れ込む→リバウンドが生じる→治療反応が生まれている→神経細胞が死んでいない→回復の可能性がある、という事になる。

話は戻すが、脳内血管径を感知し、収縮を促す頸部交感神経節処置により、極々短期的に脳内血管の収縮が訪れた後、拡張期が訪れると推測される。この拡張期に最も強く当該罹患部位に対して非日常的な血流量が流れ込み、罹患細胞の回復→機能回復→症状安定化の自覚を遂げる段階を踏む。只、1つだけ慎重にならなければならないのが、脳神経や脊髄から枝分かれする末梢神経の類と異なるリバウンドの1つに、脳神経伝達物質の分泌部位に関わる身体症状及び精神症状が最も患者にとっては理解し難く厳しい想いをするのではないかと思う。厳密に書けば、脳神経伝達物質は全てに於いて関わっているが、あくまで抽出して個別に考えればという話だ。

例とし、脳幹、橋の青班核由来と思しき症状を抱えた患者と治療後のリバウンドで例える。ノルアドレナリン含有の豊富な細胞体が種々事情によりダメージを負っている場合、やはり分泌不全により興奮又は低迷を来し、それが身体症状や精神症状として危険信号を出すと推測される。症状で挙げれば分かり易いが、興奮している場合(分泌量が多い場合、過活動と表現しても適切かもしれない)めまい、動機、過呼吸等々が訪れ(世間一般的にはパニック障害でイメージすれば早い)、低迷した場合(分泌量が少ない場合)、うつ、無気力、無動(神経変性疾患としての意味、表現ではなく)が訪れやすい(世間一般的にはうつ病でイメージすれば早い)(話が散らからないよう、GABAやセロトニン、偏桃体等の話は割愛する)。

障害名や病名はあくまで参考程度で囚われず、このような症状を中長期に渡り抱えている患者に治療を行った場合のリバウンドは、やはり同様に強いパニック発作的な状態が生じたり、強いうつ症状が生じたりする場合もある。パニック発作もうつ症状も、精神症状のみならず身体症状もあるかもしれず、また、多くの人間は此れだけの症状でもない為、罹患部位は多岐に及んでいると推測されるが、精神症状は身体症状と比較出来ない程に患者を苦しめる。リバウンドである、と認識があれば遣り過ごせるが、精神症状の悪化は厄介な印象を受ける。

このように書けば、「針刺し行為で興奮(又は低迷)したのでは?」との問いも来る為に先に書いておくが、あくまで治療中や直後に起きる現象ではない。頸部交感神経節に隣接する迷走神経に手荒な手技を施した場合は迷走神経反射も起きうる事は十分に考えられるが、仮に迷走神経反射が生じた場合は、治療中、又は治療直後に起きる。リバウンドとは治療から数十分後、数時間後、翌日等に訪れるタイムラグが特徴である。

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イメージ 1  ~針治療から病態定義の見直しを~