藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

刺針時に関する個人的見解2


「刺針時に関する個人的見解」の続きです。前項は腰部でしたが、今回は頚部です。
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理屈上は腰部と同じ事をしているとイメージすれば早いのかもしれません。頚部は肋骨突起間を探る必要がないので技術的な面で言えば腰部>頚部ですが、リスク面を含めた説明であれば頚部>腰部だと思います。
以下に改めて述べる事になりますが、刺針部位は椎間孔近傍と交感神経節近傍に対して狙われています。腕神経叢、頚神経叢問わず頚部全般に配置されている頚部交感神経節近傍への処置は、脳への血流量の増進が期待され、それを1つの症状対峙としているのですが、
脳血流量の増進と言う過程~結果に対し、患者によっては受け止め方が異なる点が1番の注意点ではないかと思いますし、トラブルの要因になるのが交感神経節への処置に伴うものではないでしょうか。恐らくこれは医療~代替医療問わず何処でも起きる(起きている)事なので、事前伝達の必要性は至極高いと個人的には感じています。
脳血流量の増進…脊髄より上位である延髄や橋、中脳、間脳(視床視床下部)等迄作用が至る事により、多くの中枢神経系疾患や、其処まで仰々しくならない自然発症性の自律神経症状、向精神薬離脱症状等々に対応出来る手段でもありますが、
患者の既往疾患や現疾患、それに伴う薬物使用の有無、服薬内容や服薬歴、服薬期等々、起こりうる可能性としての一過性のリバウンドの説明、何故リバウンドが起こるのかの説明、他、一過性ながらの血圧下降に伴う低血圧様症状の説明、他腰部への処置でも同様な事が言えるかもしれませんが、頚椎の構造的な不安定性や頚椎の変性疾患の長期罹者もリバウンドを惹起する可能性の対象ともなります。その為、凡ゆる副作用的反応の相互理解は必要でしょう。(※後述)
先日も述べたように、神経実質に刺す必要性はありません。特に麻酔薬を放たない針であれば尚更です。類似治療であれば神経根ブロックをイメージすれば早いかもしれませんが、神経実質に対して麻酔薬を放つ手段は責任高位を選択的に探る、又は手術を要するような時位なもので、あくまで「保存的治療」と言う範疇内であれば過剰治療且つ神経に刺す⇒神経損傷は必ず付き纏う手段でもある事から、鎮痛効果は極めて高いかもしれませんが、リスクとしては高いものです。段階的収束を求む場合であれば近傍処置、神経近傍の小動脈拡張でのコンスタントな栄養確保で十分に感じます。
これらのリスクを既知した上での治療ですが、腰頚部の同時進行時や、伏臥位や仰臥位では刺針時のリスクが上がる事、伏臥位や仰臥位では狙いにくくなると言う理由より、私は写真の通り横臥位で刺針しています。イメージし易いよう写真は乳様突起~th3の棘突起辺りまで加工して掲載しています。刺針部位は腕神経叢(c5~8)の椎間孔近傍及び交感神経節近傍に針尖を向けているのが分かるかと思います。
交感神経節近傍へ処置をする際は、仰臥位で刺針する画像を見掛けると思いますが、仰臥位では前方刺入となり、頚動静脈全般の穿刺リスクが高まる事から、私は前方刺入ではなく後方刺入をしています。この事で椎骨動脈等の穿刺リスクは先ず無くなりますし、以下に述べる脊椎高位のナンバリングが横臥位であれば行い易く、且つ後方刺入の場合は針尖が患者の視線に入らないので恐怖心も少ないのではないかと思います。
頚椎高位のナンバリングはth1棘突起を目安にするのが分かり易いか思います。又は後頭骨下項付近と乳様突起部の横ラインはc1~2でもある為、其処からのナンバリングでも良いかもしれませんが、横臥位を取ると、顎を引くか上げるかの2パターンが殆どの為、後者のナンバリングでは高位がズレる可能性もあり、個人的には前者を推奨しています。
写真の通り、頚椎下位になるほど刺針角度を立てている(床に対して垂直に近くなる)のが分かると思います。頚椎下位(c7~8※場合によってはc6迄)は肺尖がせり出てくる位置でもある為、肺の穿刺防止の為にも床と針尖(針体含む)を平行にせず、骨に刺尖を固定するのが望ましいと思います。そして限り無く骨に沿わす事。その事で治療中に患者に動きがあったとしても安全です。
近傍へ処置していく為にも針尖を一度後結節や横突起に当てて確認後、再度刺針転向するのが最も良く、且つ安全かと思います。後結節や前結節の位置関係は押圧すれば分かるかと思います。(右利きの場合)刺針時は押し手の2指小指側で胸鎖乳突筋を圧排、及び交感神経節部近傍の場合は内頚動脈の穿刺防止の為、同様に圧排しながら針管を立てます。尚、頚部交感神経節は上からc2~3、c5~6、c7~th1と、諸説及び配置及び配置数は個々により異なるような為、取り敢えずは全処置としています。

(※)何処の治療部位でも申し上げられる事ですが、刺針時に関するリスク管理は勿論、治療後の身体状態(症状)のリバウンド含む症状変化の予測伝達は重要な事です。しかし、伝達通りのリバウンドが生じてもトラブルと言うのは時として起こるものであり、理解を何処まで詰める事が出来るかも治療には重要な因子になると思います。
末梢神経症状~中枢神経症状全般含め、短期罹患者であればリバウンドリスクは低値を示すかもしれませんが、長期罹患者の場合、リバウンドリスクは上がります。長期罹患者の場合、何故自然修復する事なく長期的に症状を抱え続けるかと言う事を簡単にイメージすると、凡ゆる細胞が正常とは異なる状態、且つ異常が起き易い環境であり、種々事情により自己の恒常性機能が果たせない(間に合わない)為に自然治癒に至らないと考えるのが自然です。病気や症状によっては免疫や代謝の問題、構造的な異常、取り入れている薬物や嗜好品等の要素も含まれてくるかもしれませんが、
正常とは異なる為に痛みや痺れを覚え、そして更なる経時経年に伴い、傷んだ細胞は更に傷むと言う悪循環を繰り返した結果、知覚・運動・自律神経系統の破綻が起きたとすれば、回復過程も順繰りと段階的に変容していくものです。「逆戻りする」と言う表現が適切かもしれません。結果、回復過程に於いては症状も変容し、時として異なる症状となり、時として異なる部位に症状が出るのも大変自然な事です。
その修復及び修復力を押し上げるのが針治療なのかもしれませんし、細胞の回復メカニズムを稚拙ながら考察すると、上記の流れは又自然な流れかもしれませんが、現行医療のスタンダードは薬物治療であり、そのメカニズムが浸透している以上、そしてそのメカニズムに慣れている場合、仮に同じ「治療」と言う看板が掲げられていたとしても、針治療と言うのは全く異なるスタンスでもあり、その全く異なるシステムに対しての理解と言うのは未だまだ時間の掛かるものである事も実感しています。

「>>一般的にL5/Sは腹臥床でも横臥位でも、脊椎外側(遠位)から刺入しようと思うと、外側であるほど腸骨稜が邪魔をする為、刺針部位はヤコビーライン上からに見えるかもしれませんが、仙骨側に刺針角度(針尖を尾側に向けている)を付けています。その為、患者体形によってはL4高位からL4/5、L5/Sに針尖を振り分ける時もあります。」
に関して「>>患者体形によってはL4高位からL4/5、L5/Sに針尖を振り分ける時もあります。」の部分でご質問を寄せられた方がいましたので参考までに掲載します(掲載許可は頂いています)。「L4高位からL4/5、L5/Sに針尖を振り分けるってクロスするって事?(質問者さま)」との事ですが、其の通りで、竜頭はこのようにクロスする角度を示します。勿論、あくまで処置部位に対して針尖が向けば良い訳ですから、これ以外にも方法はあると思います。
変形や奇形、癒合、術後のプレート固定、治療時の患者姿位(生理的前彎姿位を保ったまま 腰椎を後彎化させる方等など)、色々あると思いますのでこちらに限った話でもありません。他、基本的に私の使用している針は市販されていないので同様な事が腰部で出来るかは分かりません。頚部であれば市販品で代替出来ると思います。
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 ~針治療から病態定義の見直しを~