藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

向精神薬由来症状/離脱症状の安全な取り組み方の検討と治療

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2018年4月から2019年4月に渡って書いた、「向精神薬由来症状/離脱症状の安全な取り組み方の検討と治療」と、関連性のある部分を追加してまとめたものです。既に1~2年以上経過した内容の為、私自身の見方も様々変化していますが、概ね変わらないと思います。

 

その時々の現場感覚をジリジリと文字に起こし、行ったり来たりしながら書き進めた為、重複する内容もありますが、精度を高める為の見直し的な意味合いも大きいと今にして思います。多少長く目次も作成しておりませんし、幾つかの知識が前提となる為、読みにくいかもしれませんが、向精神薬が及ぼす社会/経済/身体への影響は果てしなく、これくらいの考察では全く足りません。その為、今後も引き続き検討しなければならないと思っています。

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離脱症状は十数年前より訴えられていましたが、2017年春にPMDA(厚生労働省所管 独立行政法人医薬品医療機器総合機構)よりベンゾジアゼピン系の離脱症状の存在が発表されました。そしてその時期を前後に、SSRISNRI、NaSSA等の抗うつ薬が様々な症状に適応を打ち出し承認を拡げ、運転禁止薬から注意薬へ緩和したりと、マーケットを拡大し始めた時期になります。

 

ベンゾ系は、ザル制度ながらも診療報酬の改訂の度に様々な規制が強まっていますが、規制強化を見越したかどうかは定かでないものの、上記の通り、タイミングを前後に抗うつ薬が様々な症状に対して承認を受け始め、規制を緩和し始めたのが2016年から2017年頃です。ベンゾ系の規制強化はマーケットの縮小とイコールになる為、今度は抗うつ薬のマーケットを拡大しようとするのは自然な流れと思います。

 

さて、ここまでは具合いの悪い患者にとっては関係のない話で、「具合いが悪い」と伝えたら、長期的な処方で減算処置に繋がる現状のベンゾ系よりは、抗うつ薬を出し易い環境かもしれませんが、ここも患者にとっては全く関係のない話です。どちらかと言えば「昨今の事情により」です。いったいいつになったら患者の為になる日がくるのだろうか、と考えてしまうのですが、もしかしたらそんな日は来ないかもしれません。ただ、そんな日は来ない、と思うことで開ける未来もあると思います。

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様々な制度の変化や、規制の強化や緩和、適応疾患が増えたからと、そのものの副作用や離脱症状が柔らかくなる訳はありませんし、2017年以降はPMDAの煽りもあり、ベンゾ系からオレキシン受容体拮抗薬への急速な置換や、抗うつ薬系への急速な置換等も目立ち、このような歴史の転換点では一定の犠牲者が出たのは記憶に新しいものです。

 

「危険と聞いた」「この薬は暫く飲んでるけど効かない」→「だから止めよう」「だから減らそう」の思考や行為は、これらの物質は危険が伴う為、自身の体感を指標とし続ける事が安全なのは、何年経過しても変わらない印象があります。

 

少なくとも離脱症状が酷い内は、如何なる理由も減薬や断薬の理由にしてはいけない印象がありますが、残念な事に大概は「誰が言っているか」で物事を決め、「何を言っているか」は重視しないものです。それが結果的に、先日のPMDAの発表がその証明とも言えます。離脱症状は一旦始まると、時にブレーキが効く気配がない程、症状が強大化しますし、例えば脳血管障害等と異なり、症状の完成も存在しない病態です。

 

また、飲んでいない人には安全な話も、飲んでいる人には危険になる話も多いのが、中枢神経に反応を及ぼす、向精神薬や鎮痛薬の類です。しかし、先々の安全の為には今の安全を確保する事も必要と思うのですが、危険と知り、今すぐにでも手放したい思考を、もう一度修正するのは難しい場合もあります。

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常々、ベンゾ系の常用量離脱症状含む離脱症状(同一作用を備えるリリカやバクロフェン等々も諸々含む)を、患者ベースで既知としていない場合、伝達する事が逆に危険を招くケースは少なくないと考えています。

 

今までも今も、何らかの講演会の後に断薬(急減薬含む)して、動画を見て断薬をして、週刊誌を見て断薬して、本を見て断薬して、テレビを見て断薬して、掛かり付けやセカンド含む医療機関の受診後に断薬して、子供や孫に言われて断薬してと、様々な契機で急減薬や一気断薬が比較的日常です。

 

この手の薬物は極めてリスキーな側面を兼ね備えていますが、作用/副作用と離脱症状を混同した情報や、離脱症状を良きものとする情報(我慢しろ系や、離脱症状は回復している証拠だぞ系です。我慢してもどうにもなりませんし、離脱症状は回復している証拠でもないと思います)により、解釈の仕方も千差万別と感じます。

 

上記のケースが多数存在する為、どうすれば悪くなってしまうかの情報は幾らでも存在します。その真似さえしなければ、一旦はある程度のリスクは回避出来ると思いますし、私も先ずは今以上悪くならない方法をお伝えしているつもりですが、ヒトは具合いが悪くなると本能がそうさせるのか、大概は同じような行動を取ります。

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また大切な事に、離脱症状は薬物で神経伝達物質の動態変化を求めた身体/精神状態とは異なり、自己の神経伝達物質の動態変化による身体/精神状態と推測される為、副作用と離脱症状の病態概念や成立概念を混同した解釈をしないよう気を付ける必要性がありますが、類似する症状群が並ぶほか、決定的に判別出来る検査手段もない為、時系列を追うしか手段はないと思います。

 

実際には副作用か離脱症状かを知る手段は幾つか存在すると思われ、その1つに、休薬→症状が良化→副作用、休薬→症状が悪化→離脱症状、とする判別方法もあるかもしれませんが、仮に後者の場合、再服薬の時期等によっては、レセプタのレギュレーションの自然変化等と推測される様々なネガティブ事例も数多く、幾つ身体があっても持ちません。

 

何より副作用は飲み始めで直ぐに気が付くケースが多い為、中長期的な服薬背景がある以上、常用量離脱症状含め、惹起する前提で危惧していたほうが寧ろ安全です。そして、今後も中枢神経に反応を及ぼす薬物は当たり前かもしれませんが、当たり前だから安全という理由はありません。

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神経伝達物質が過剰に流入し、神経細胞を傷めた結果論の諸々の状態や、不足した結果論の諸々の状態の改善目的として、更にレセプタに蓋をしたり促しても、先ずはそれは治る方法ではなく、今の安定と先々のリスク減の繋ぎでしかないと思います。一見、ネガティブに受け止められますし、「今すぐにでも止めたい」的な心理状態の人には無理な話かもしれません。それは私も現場を通じて実感していますが、先を見越した場合、飲んでしまったなりでの対策を講じる必要が生まれます。

 

飲み忘れ等も含みますが、「今日は飲まなくても平気でした」を繰り返す人ほど経過が悪いものです。荒い血中濃度を持たせてしまうと、理由に関係なく実質的に同じなので、追々芳しくないのも共通しています。短時間でも、又は1日でも、今の薬物が血液に混じっていてほしくない、その感情は分かりますが、余計なリスクを招く事は知られてます。

 

患者背景によりリスクの有無や高低はあるかもしれませんので、例外も数多くある為にこの部分は割愛しますが、中枢神経に反応する薬物のイメージは、このように考えています。例えば私(藤原)が「めいらっくす」を飲んでいる場合、「フジワラコウタ+めいらっくす」ではないと思います。「フめジいワらラっコくウすタ」になると考えています。引きはがす時、自分もろとも痛みを伴いそうです。薬物による神経適応とは、そのようなものと解釈しています。

 

これが例えば「せれこっくす」の場合、「フジワラコウタ+せれこっくす」になると思うので、引きはがす時の痛みも伴わないと思います。何等かの疼痛緩和が得られていた場合は、何れも薬物への渇望は起きるかもしれませんが、リスクは殆どないと思います。このように、自分そのものとなる中枢神経に作用を起こす薬物/物質全般は、そのものが自分を変えてしまう可能性がある為、リスクが高いと思います。

 

そのような中、最も経過が安定する群は、皮肉な事に離脱症状の類を知らず、漫然と服薬している群である事には変わりありません。仮にステイしている場合、両群とも実質的には同じであるにも関わらず、なぜ離脱症状の存在を知った群が不安定かを知る理由に、上記の薬物に対する荒い服薬方法が挙げられる他、社会への負の感情も大きな要因になっていると思います。

 

シンプルに書くと、離脱症状を知った群のストレッサーは様々な矛先に向く為、大きな負担が掛かり続けますが、離脱症状を知らない群が考えることは身体だけ、の場合もあり、知らない群から厚労省ガーとか、医者ガーとか、裁判ガー、ウォータータイトレーションガーと聞いた事はありません。医原病的な側面を持つ離脱症状の類は、負の感情も渦巻くかもしれませんが、それは時に大きな足枷となる可能性もあり、このような日常のストレッサーは減らせるだけ減らしたほうが経過は良いと思います。

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ヒトは生理的に代謝要求の高い部位がどうしても存在する為、当該部位より先行的に傷害を負いやすく、結果論としての症状が惹起される確率は高い印象を持ちますし、服薬歴含む既往疾患や当該個人の生活環境、特に曝露時の生体の機能面に依存すると推測されますので、曝露因子が同一だとしても重症度に差が出ると捉えています。自然治癒は後日の結果論になる為、症状残存時は確率も未知数ですが、自然治癒が可能な病態か、加療が必要な病態かの線引きがこの時に決まってくると捉えています。

 

症状の継続要因や後遺障害とされるレベルの期間に渡る症状の残存理由から、改めて自然治癒が可能な病態に視点を向けたり、症状自覚となる耐痛閾値等々を踏まえれば、罹患理由や傷害のプロセスは異なれど、終末的な神経細胞の状態は恐らく大半が酷似すると推測しています。

 

それはあの症状、この症状が惹起されたからと、あの薬この薬、これで効かなければあの薬この薬、増やしてみようかな減らしてみようかなetc…とする、手を変え品を変え(向精神薬を手を変え品を変えすること自体が極めてリスキーなのですが、一旦その話は置いといて)のスタイルとは異なり、超音波も効果の下駄履かせとして加勢する時はあるものの、針治療しかしていない事で見える背景もあります。

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f:id:fujiwarakota:20200710112556p:plainイメージ 1 ~針治療から病態定義の見直しを~

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