藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

縦軸の過剰伸張に伴う脊髄リスクと椎間孔部の骨性易インピンジ


昨今は余り用いられない単語かもしれないが、脊髄の繋締症候群と言う症候群がある。小児~成長期に掛けて脊椎の成長過程に追い付かない脊髄の縦軸に発生する過剰テンションに伴う多恨性の末梢神経症状及び中枢神経系症状であり、小児~成長期に掛け発症頻度は高い。
結果的にキアリ奇形等の器質的異常も伴う場合もある為、影響は多恨非対称両側性の末梢神経損傷のみならず、中枢神経系の機能異常にも至る程の力価が加わっているものと推測される。
そしてキアリ奇形には側湾症が伴う事はよく知られている。改めて書けば、脊椎の成長に際し、内部走行する脊髄の成長が追随出来ない場合、末梢神経系の損傷のみならず、過剰な脊髄の下方取り込みに伴う中枢部位の破壊が懸念される。
その為、側湾と至るのは頚椎から腰椎に掛けての全脊椎が過剰前屈を防ぐ為に横軸での変形を進めてでも中枢神経を死守した結果なのかもしれないが、以下に則する内容と言うのも、仮にもキアリ奇形や側湾と言う画像所見上明確な異常が伴わなくても十分に症状として生じる可能性はあり、そして延髄の頚椎部迄の引き込みがなくても側湾を呈している場合は其れだけで凡ゆるテンションが過剰となり諸症状が引き起こされる事が示唆される。
これらの、明確に画像検査時に所見が取れない場合の現行医療機関に於ける弊害、そして諸症状に対しての現行医療機関に於ける治療と言うのは如何なるものかもイメージしながら進めていけば、如何せん症状の収束に至る可能性と言うのは何れ程か、そして患者が治療時に暴露されるストレスも如何に多大かと言うのも伺いしれる。
例えば、肩凝りや腰痛と言うカジュアル性の高い症状も含め、発症時期や発症理由、発症内容等も個体差は生まれる為、どの疾患、どの症状にも軽重は存在すると思われるが、あくまで筋骨格系疾患は日常動作に比例するケースが大半であり、日常動作に比例して自然軽快するケースも多く散見される為(勿論、何故症状自覚の閾値が低くなるか迄考察すれば栄養素の問題も関与する事になるが)、仮に画像所見上の異常も軽微であり、且つ日常生活に於いても「たまたま」運動量が少ない場合であれば症状の自覚はないと思われる。
仮にキャパを超えた運動量が生じ、一時的に筋骨格系様症状を呈しても、元々のベースに運動が存在しない患者の場合、直ぐに自然軽快するかもしれない。その為、持続的な症状自覚と言うのが存在しなければ、一般的には頚部も腰部も写真を撮る事はない為、一般的に知られている事でもなければ、高齢になり別件でMRIに入ったらキアリ奇形と呼ばれる程の異常を呈していたと言うケースも存在する為、知らなければ知らないまま、症状が無ければ症状が無いまま一生を過ごす人もいる。
後述はするが、これらの症候は「場合によっては」高齢になるに従い無症候になる場合もある。もしかしたら、以前は別な診断名で各々治療を行ってきた経歴もあるかもしれないし、画像検査機器の発達がキアリ奇形の罹患者の増加に繋がっている背景もある事から、こればかりは推測の域を脱する事は出来ない。このように、器質的異常や構造的異常が生じていても幾らでも無症候の症例と言うのは存在するし、日常生活が易負担性を伴う日々であれば易損傷性となるのは、別に今件の症例に限った話ではない。
このように症状自覚の有無は確実に個体差が生じ、存在するだろうし、特に末梢神経系の症状であれば、日常生活に於いても易負担性を示す部位及び易脊椎可動域が広い部位から鑑みた場合、頻回する頚部痛(及び頚部神経由来症状)や腰部痛(及び腰部神経由来症状)への発展と言うのは極めて自然な考察に至ると思われる。
動作環境に比例する為に軽視されがちになるし、手術適応に至らない程度であれば何もされないか、鎮痛剤や向精神薬の長期投与に陥ると言うのを要は懸念しているのである。これらの中長期服薬に伴うリスクは別項を参照頂くのが良いかもしれないが、症状発症の探求が至ったからと、これらに絡む薬物治療自体が既にリスキーな将来性を持っていると鑑みた場合、異なる視点からアプローチを行う事が極めて肝要にもなる。
此処で一度立ち止まって考察したい事は、極めて強いテンションが脊髄の縦軸に加わる事で、知覚神経・運動神経・自律神経の類が一斉に損傷を受けかねない程の症状を呈するかもしれず、硬膜に存在するストッパー的な役割を果たす各種靭帯の類も意味を成さないと言う意味となり、整形領域的な単根及び2~3根程度の体性神経の損傷とは異なる広域に渡る症状を呈する可能性が大いに考えられる。これも後述するが、非対称性の両側に至る末梢神経系損傷及び中枢神経系異常が併発する可能性も稀ではない。
脊髄の過剰テンションは、解剖的にL1下位は馬尾型へ発展派生し下肢へ走行する為に余裕はある。しかし、頚神経系の場合、腰部と比較しても余裕がない(逃げ場がない)為、及び頚神経は走行角度も常に骨性の易インピンジメント性を呈しやすい環境である事、そして一度神経実質の容積変化も伴えば更なる易インピンジと言う悪循環も生まれる事も併せて考察すれば、可能性としては肩頚部及び上肢症状の自覚が先行的に発生するものと思われる。
これらの末梢神経系の痛みであれば、病期も初期であればNSAIDs等で十分なQOLは確保出来るかもしれないが、その多くは進行性であると言う将来が孕んでいる為、中長期的に見た場合、薬物としての効果も薄くなる事(薬物耐性の問題も絡んでの事にはなると思うが)は目に見えている。問題は、過剰テンションに伴う末梢神経系の問題だけではなく、仮にもキアリ奇形等迄伴う中枢神経系の機能異常が生じた場合の全身症状及び末梢神経系症状と言うのは非常に興味深く感じる。
中枢を由来とする運動障害や発達遅延、てんかん、自律神経の機能異常、内分泌異常等も伴うかもしれないが、「軽重」の内の「軽」に属した場合、凡ゆる検査でも異常を呈さない場合も考えられるし、単に自律神経症状、内分泌疾患等で判断を終えられている場合もあるかもしれない。
そのような可能性も探れば、如何に人間と言うのは脊椎前屈と言う姿勢は心身に対して過度な負担を強いる事になるか、生理的姿勢に反した時間を経過させる事が如何に負担になるかと言うのも又分かる。これは冒頭から述べている症候群に属する患者群だけでなく、誰でも幾らでも誘発される懸念が在る。
生理的に前弯傾向を伴う頚椎や腰椎が持続的に後弯傾向を示す時と言うのはどの様な時かと言うのも見逃せないポイントであり、これが高エネルギー外傷が伴う構造的異常も生じている症例等であれば患者自覚もあるものだが、日常生活を送る上での時間概念を取り入れた持続的な負荷と言う考察が案外軽視されている側面もあると思われる。
それも先述の通り、労働内容等で強いられる同一姿位の維持であり、同方向にしか運動ない労働でありと、常時同一部位にしか負荷や圧迫を掛け続ける事に伴う脈管圧迫や絞扼に伴う末梢神経系の摩擦や牽引、張力等に伴う由来となる諸症状かもしれない。しかしながら、これらは極めてカジュアルに発生する症状であり、且つ患者ベースでも修正し難い環境でもある為、これも同様に軽視される。
病態としてRSDやCRPS、小児~成人問わずFMS様症状だとイメージするのも早いかもしれないし、神経過敏、中枢感作、アロディニア等とイメージしても分かり易いかもしれない。これが、脊椎の可動域の広い部位で富に発生し、上肢や下肢の末梢、更に中枢全般に症状を呈している潜在的患者と言うには非常に多いものではないかと受け止められる。
明らかな器質的異常を解除させる為に昨今は脊髄終止を切除すると言う手段もあるかもしれないが、その事による弊害も考慮した場合、限りなく保存的に治療をする方向で向かいたいかもしれない。超長期的な視野で見た場合、小児及び成人期に生じたとしても、経年変化で各種椎体や椎間板が自然に圧壊等を起こす事で脊髄のテンションも緩む事から緩徐に症状は軽減する可能性もあるが、
これら椎体や椎間板の圧壊要因が経時経年の過負荷に由来するものだとした場合、小児及び成人期から症状を抱えている場合、そもそも過負荷と言う行動が不可能でもあり、早期段階から脊髄のテンションを緩める手段を講じる必要もあるかもしれない。その1つに、椎体を必要分だけ取り除くと言う手段も挙げられるかもしれないが、これも基本的にはオーバートリートメントである事も察しがつく。
しかしながら、二分脊椎や奇形に伴う多椎体も、経時に伴い順応するケースも散見される事から、可能な限り手術と言うのは避けて通りたい、且つ保存的に脊髄に撓みを作る、椎間孔部での骨性の易インピンジメントを防ぐ、仮にも易インピンジメントに伴い末梢神経系神経症状が出た場合も、即時的に症状の改善を見越せる手段を有しておくと言う柔軟性を持たせた予後を見通す事が先ずは重要ではないかと思う。
前置きは長くなったが、進行性且つ広域に渡る神経症状と言うのは、仮にも小児~成長期問わず、様々な年代に於いても存在する事も容易に察しが付く。改めて書けば、生理的に前弯傾向を示す脊椎が後弯傾向を示す事で、脊髄の縦軸のテンション異常に伴い、多恨に渡る症状が惹起されるのは、誰しもが日常で経験している事と思う。思うが、その多くは「軽重」の内の「軽」の痛みで日常生活を脅かす事にもなる為、自然に行動抑制を呈し、又は(是非は扠措き)薬物で難を逃れる事も不可能ではない。
しかしながら、現行医療の整形領域に於ける脆弱性は、単根程度であれば目星が付くものである事から改善へも導きやすいものかもしれないが、これが多恨及び非対称性の脊髄症とは似通わない末梢神経症状を呈した時に、著しく弱くなると言う事は知っておいても損はない事なのかもしれない。簡単に書けば「ムチウチ」の類すら早期脱却出来ない状態である事も挙げられる。
余談ではあるが「ムチウチ」の背景は交通事故や労災が絡む場合もあり、業界的には早期に回復させては食い扶持を減らすという制度も絡む為、延々と通わせる節もあるが…基本的に制度を食い扶持とし、その制度のレールに乗せられた患者は注意しなければならない。相互が制度に依存した場合、健康獲得と言うのはビジネスと言うレールに乗せられ、改善どころか治癒遅延を招き続けると言う事である。以前もマッサージに伴う延髄損傷のケースを挙げたが、流石に此処までの重症例は少ないものの、頚神経系は極めて浅層に重要な神経系が走行している為、治療手段によっては治療を由来として傷めてしまう部位ともなり、それが負担となる程の運動や経皮非経皮問わずの強い低周波、極めて強い回旋、強度圧迫は、治療を由来として肩頚背部の神経症状及び中枢神経系機能異常を惹起する懸念がある。
話は戻すが、あくまで推測の域は脱しないが、これら全ても画像所見に依存し過ぎた結果かもしれないし、発症時期と現症状とのマッチングが及ばない薬物治療が主体である為に奏功しないと言う理由も挙げられるし、もしかしたら一般的な鎮痛剤等では著効を示さずとして、オピオイド系の鎮痛剤や向精神薬の多剤投与が絡んでいるかもしれないし、疼痛のみならず併発する各種自律神経症状に関しても同様な事が挙げられるが、このように多恨非対称に渡る神経損傷(症状)及び自律神経症状が併発するような複合的な症状を呈した場合、現行医療では極端に見立ての精度は落ち、追随するかのように改善率が激減する傾向がある。
さて、このように画像所見と症状は一致しない理由と言うのは、現行の画像検査機器では異常として写らないと言うのが先ず1つ。そのような視方をしない限り、異常としては見えないと言うのも1つ。片側の単根~2根程度の末梢神経損傷であれば未だしも、両側性非対称性の末梢神経損傷であれば匙を投げかねられないのが1つ。既存病名で包括出来ない場合、急に精神異常者とされるのが1つ。既存病態定義の誤りが挙げられる事が1つ。今思い浮かんだのは其れくらいだが他にもあるだろう。勿論、皆が皆ではないかもしれないが、そのように症状が複合的に織り交ざる場合、単なる頚部の末梢神経損傷も、このような背景を患者は持つ事もある。
これらの観点も全て踏まえて考えれば、幾らでも上記症状を潜在的に抱える群と言うのは存在するし、薬物治療では著効しない層、及び病態と言うのも容易にピックアップ出来るようになる。その年代層は幅広いものであるが、これが仮にも小児の時期から身体状態を掌握する事が出来れば、今後の将来的に発生するであろうリスクを回避出来るようになる。

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